伊那谷暮らし日々のこと10月 Vol.8

台風一過。爽やかな10月の始まりの日だ。下染めしておいた何枚かの柿渋の布を取り出してきて染め重ねの作業。抜染や模様入れは後日、先ずは濃いのや薄いの、いろいろに染め上げておく。夏に比べて随分と陽も傾いてきた。
愛知県に居る時は年間通して柿渋染めの作業が出来、夏には夏の、冬には冬の染め上がりでそれぞれに良さがあった。大曽倉でこれからの季節、どういう染め布が出来上がっていくか楽しみでもあり、来年からの染めの作業の参考になる時期になるかもしれない。
9月のもみじクラフト(駒ヶ根)でジャケットをご注文下さった素敵な女性との出会いがあった。6月のくらふてぃあ杜の市でもブースに来て下さっていて、つば広の帽子とブラウスとパンツのさりげないおしゃれが品良く、印象に残っていた方だった。
ジャケットが出来上がり10月に入って我が家まで来て下さった。お土産に頂戴したのがお手製のカンパーニュ。
酵母を育てて、全粒粉、クルミ、レーズン、オレンジピール、吟味した材料で焼かれたカンパーニュは滋味深くやさしい甘味が口いっぱいに広がって、美味しいとしみじみ感じた。

天竜川を渡って大曽倉までの道沿い、どのルートからでも栗やクルミの木があちこちにあり、9月半ば頃になるとたくさんの実が落ちはじめた。ちょっと走っては車を止めてクリ拾い。クルミも栗も種類が色々。栗は小さいけれど山栗が美味しいと聞いていた通り、甘くて美味しかった。
我が家にあるクルミもたくさん実をつけてくれた。師匠(仙人春日さん)か実の処理の仕方を教えて下さった通り、肥料の入っていたビニールの袋にクルミを入れ袋の口をしっかり縛って外皮が腐って真っ黒になるまで放っておく。(袋と縛る紐まで持って来て下さるなんて..)
日中は17~8度程で随分暖かいが、夕方5時頃になると一気に気温が下がって8~9度くらいになる。今夜(20日)11時、ミシン仕事の休憩にコーヒーを持って外に出ると昨夜よりもひんやり。温度計を見たら2度だ。見間違い?確認するがやっぱり2度。数字には驚いたがしばらく外に身を置いても寒くなって震えることがなかったのは、体がこの地に少しずつ順応してきたということかも。
6月から収穫してきたピーマンとパプリカ木は病気にもならず元気で、いくつか実をつけてはいるが日照時間が短くなり朝夕の冷え込みもあって色づくのが難しくなって来た。
もうじき、えんどう豆を蒔く準備をするのに、どうしようか、どうしようか…よしッ!と決めてパプリカ、ピーマン5本を引っこ抜いた。もちろん「今までたくさん実ってくれてありがとう」と感謝を伝えて。

このところ午前中はお日さまいっぱいのぽかぽか陽気で、午後3時ごろから雲が出てきて雨になる日が続いている。葉っぱものは順調に育っている。野沢菜はプランターだけで、冬菜の摘み菜でいただく用はプランターで、冬を越して来春新芽をいただく用は下の畑に。朝夕の気温が一桁になるようになってから更に元気よくなってきている。やっぱり冬の菜っ葉だから?
「種を蒔く」ことは実はとても細やかな作業であることが今回よ〜くわかった。芽が出て葉っぱが何枚かになったら間引きして…と聞いていたものの、どうして種3〜4粒ずつを間隔あけてなのか気付かず、適当にパラパラ〜ッとプランターに蒔いたのだが伸びてきた芽の状態をみてこういう事か、とよくわかった。間引きも難しい程込み合ってしまいヒョロヒョロ。間引きする分も多く、せっかく芽を出したのに摘み菜にも出来ず可哀想な事をしてしまった。
草避けになるかと思い春にレンガを並べたスペースはレンガの隙間からいろんな草がワサワサ伸びてきたが、レンガの色並びが心地よくさらに広げてみた。いろんな草があって、いろんな虫がいて豊かな土が作られることにも繋がるわけで、草取りはするが草一本無い畑を作ろうなんてこれっぽっちも考えてはいない。たった半年だが土いじりは雑草と言われる草にもどんな虫にも役割がある事を教えてくれた。上手いこと寄り添って譲り合って、ね。
9月に植え付けずっとネットを被せておいたキャベツさん。大きく立派に育ってネットの中で窮屈そうだったのをようやく伸び伸びさせてあげられた。我が家の敷地の入り口に横に広がった結構大きなイチイの木がある。
イチイの実が食べられると聞き食してみたが、ヤマホウシの実よりもずっと美味しかった。
枝が伸び放題で長方形の頭でっかちの形が気にはなっていたのだが、手をつける余裕もなくそのままにしておいたら、師匠が来て「前から気になって気になって、剪定するよ」いつもの仙人だ。「勝手にするから仕事してな」と御構いなしでそのままお任せ。
たった半年でこんなに図々しくさせてもらえるまでになれたのは、唯々、師匠の面倒見の良さと裏表ない額面通りの言葉に尽きるだろう。しばらくして見に行くと、頭でっかちのイチイは何処へ⁉︎ 庭園にでもあるようなきちんとした形のイチイにビックリ! 以前も松の剪定をしてもらって庭師の腕をお持ちなのはわかっていたが、このイチイの剪定には再度頭が下がった。師匠の出来ない事って、何?

26日から28日まで愛知県蒲郡市のクラフトフェア蒲郡に出展。大勢の友人やお客様との再会に恵まれて充実し楽しかった。搬出後そのまま駒ヶ根に帰宅して翌朝、向かいの山の色づきの具合が一段と濃くなっているのにため息が出た。ブナやナラ系、カラ松が多いので黄色や橙色、茶色と派手さは無いが実に深い色合いの黄葉だ。庭のローズマリーとラベンダーの刈込みをし、あちこちに伸びたアップルミント、ペパーミント、キャットニップのランナーをカット。場違いなのはわかっていたが、どうしても置いてこれなかったレモングラスはちゃんと根付き葉っぱもたくさん伸ばしてくれた。葉っぱをカットしてドライにしてハーブティーやエスニック料理に使う。株は掘り起こして鉢に移したほうがいいかもしれない。日々の冬支度が妙に楽しい。
16日に中央アルプス、南アルプスが初冠雪。その後それ程気温も下がらなかったので山頂の白っぽさは消えていったが今日31日、今朝の気温はー2℃。昨日よりも黄色が深くなった山の色と両アルプスの降雪の白さが昨夜の冷え込みを教えてくれた。16日よりも沢山降ったのがよくわかる。
そこまで来ている冬を迎えるまでの黄葉を身体いっぱい心いっぱい愉しむ。こうしてここで生かせて頂けることの歓びと感謝に掌を合わせた。

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